「お前、また聖川財閥の跡取り息子と遊んでいただろう」
 父親の鋭い声が飛んできて、レンは思わずきゅっと身体を縮こまらせた。
 あれは確か、正月のパーティが終わった後のことだった。一年の始まりを祝うパーティは、一年の内のどんなパーティよりも豪華絢爛で、シャンデリアが明るくて、綺麗な音楽が流れていて、ご馳走もたくさんあって――それでいて、どこか冷たくよそよそしいものだった。大人たちの交わす言葉のよそよそしさと、穏やかな声音の内に秘められた激しい敵対心に、レンは薄々感付いていた。
 つまらない。そう思ったら、レンは大人達の林をくぐり抜けて、彼を探すことにしていた。この大人達の冷たい雰囲気に気圧されたように、戸惑いがちに目を伏せて、パーティ会場の隅にいる一人の男の子。自分とさほど年の違わない子供がここにいるのがなんだか嬉しくて、レンはいつも、その子の姿を探していた。
 聖川真斗という名のその男の子は、レンの姿を見ると、ぱっ、と顔を明るくした。
「行こう」
「うん」
 どちらからともなく手を握り、パーティ会場を抜け出した。咎める者は誰もいなかった。父親達は大人達と上っ面だけの会話を交わすことに神経を集中させていたし、躾の行き届いたお付きの者達は、二人のことをこっそり見逃していてくれた。
 二人は夜の中庭に出て追いかけっこをした。それに飽きたら少し遠くまで歩いて、浅い池で水しぶきを掛け合った。夢中になって遊んでいると、それぞれのお付きの者達が、そっと声を掛けに来てくれる。もうそろそろお帰りの時間ですよ。名残惜しい気持ちを引きずりながら、また遊ぼうね、と約束して、二人はそれぞれの家へと戻っていくのだった。
 父親は、真斗とレンが遊ぶことを、どうやら快く思っていないらしかった。パーティの翌日、レンを自分の書斎に呼び出すと、きっ、と目を細めてレンを睨んだ。レンは恐ろしくて縮こまる。父親は、一切表情を変えなかった。
「もうあの息子と遊んではならん。パーティ会場では兄達と共に、大人しくしておけ」
 だって、とレンは上目遣いで父親を見ながら、小さな声で言い訳をする。
「つまらない。兄さんたちといたって。それに、真斗と遊んでる方が、楽しいし」
 そう言った途端、父親は形相を変え、威嚇するように歯を剥き出してレンを睨み付けた。
「黙って私の言うことを聞いていればいいんだ! とにかく、ならん。あの息子だけは……!」
 急変した父親があまりに恐ろしくて、レンの瞳にじわりと涙が浮かび上がる。目に力を入れて、頬の上を流れないように、ぐっと堪えた。父親はレンから背を向けると、机の真後ろにある窓と向き合った。
 父親の背は、昔から冷たかった。まるでそそりたった黒い崖のようだった。成績優秀で、ゆくゆくは跡取りとなるはずの、自分によく似た長男を贔屓し、同じく成績優秀で、運動神経にも恵まれた次男を褒めそやした。幼くてまだ取り柄のないレンは、まるで見向きもされなかった。自分が殊更母親に似ていた、というのもあったのかもしれない。父親は何故か、母親を嫌っているようだった。アイドルとして芸能界の頂点に上り詰めた母親の生前のテープを全て処分し、写真も遺品も全て焼き払った。以前部屋を整理したときにたまたま出てきた母親のテープを、まるで親の仇でも見るかのような、憎悪に満ちた目で見つめていたのを、レンは忘れることが出来ない。
「……ごめんなさい」
 父親は何も言わなかった。レンはそっと踵を返すと、暗い表情のまま、書斎を立ち去った。


 その次、今度は春に開かれたパーティで、レンは父と兄たちの目をかいくぐって、再び真斗の姿を探した。真斗はすぐに見つかった。示し合わせたように、二人は再びパーティ会場を抜け出した。父親は相変わらず政治家の偉い人と話をしていたし、兄たちは兄たちで、声を掛けてくる大人達に褒められようと、背伸びするのに必死だったから、都合が良かったのだ。
 何も知らずにいつも通りはしゃぎ始める真斗を見て、レンの胸に何かつかえるのを感じた。先日の父親の言葉を思い出してしまったのだ。思わず俯くと、それに気付いたらしい真斗が駆け寄ってきて、レンの顔を覗き込んだ。
「どうしたの、おにいちゃん?」
 なんでもない、と言おうとして、違う言葉が口から転げ落ちる。
「真斗は、聖川財閥の跡取り息子、なんでしょ?」
 真斗はうん、と頷いた。その時、一瞬表情が曇ったのを、レンは見逃さなかった。
「いいよね。跡取り息子だったら、パパ、ずっと見てくれるもんね。真斗のこと」
 真斗は小さな声でうん、と言った後、でも、と少し悲しそうな顔で付け足した。
「父上は、怖いよ」
「怖いの?」
 レンは驚いたように目を見開いた。
「僕のパパは、兄さんたちには特別、優しいのに」
「僕の父上は、怖い。僕は父上の言われたことだけしていればいい、それ以外のことは絶対するな、って言われたから」
 だから、自由じゃない。真斗はそう言った。レンは驚いてそうなんだ、と言った。自分が自由かそうでないかなんて、レンはほとんど意識したことがなかった。父親はレンに関しては放任主義で、レンのしていることに口出ししてくることなど、滅多になかったからだ。
 ほとんど歳が違わないのに、こうまで双方を取り巻く環境が違っている。レンは驚くと同時に、新たな感情が、真斗に対して生まれたのに気付いた。その感情を表す言葉を、レンはまだ知らなかった。ちりちりと心の中でくすぶったまま、いつまで経っても消えてくれなかった。その正体が何であるかは分からないが、不快だ、ということだけは分かった。
 自分とまるで違う環境にいる真斗。いいなあ、という気持ちと、じゃあなんで僕は、という気持ちが、心の中で同居した。
「本当はね」
 真斗が唇の前で人差し指を立てて、声をひそめた。
「父上に、レンおにいちゃんと遊んじゃいけない、って言われたんだ」
 レンは思わずえっ、と声を出した。まさか同じことを言われていたなんて。
「本当は、僕も」
「えっ、レンおにいちゃんも?」
「そう。パパが、聖川財閥の息子となんか遊ぶなって」
「……僕も、神宮寺財閥の息子と遊んじゃいけないって」
 レンは少しばかり不安げな表情をする真斗の手を、固く握りしめた。
「こんなのおかしいよ。僕と真斗はこんなに仲良しなのに」
「……うん、そうだよね」
 自信なげだった真斗の瞳に、強い意志が宿るのを見た。レンはそれがとてつもなく嬉しくて、何故だかそのままこの手を握って、飛び跳ねたい衝動に駆られた。
「今日だけは、いいんだ。特別だよ」
「うん、特別」
「ずっとずっと、真斗だけは、特別」
「うん!」
 レンは真斗の手を、いつもより強く引いた。真斗は一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に戻って、レンに付いて来た。
 こんな楽しい時間が、一生続けばいいのに。レンは幼心にそう願った。それが真斗と同じ気持ちであることを、そしてこの時間が本当に、この先もずっと続いていくと、露ほども疑わずに。


 中学に入った頃、レンは、ある程度広い世界が見えるようになっていた。神宮寺財閥の三男という、自分の世間的立場。そして幼い頃よく遊んだ彼の、聖川財閥の跡取り息子という、世間的な立場を。
 世界が見えるようになってから、二人が言葉を交わすことはなくなっていった。パーティ会場で見かけても、少しちらちらと見やる程度で、自分から近づいていくことはなかった。無論、真斗の方もわざわざ近寄ってきたりしない。幼い頃見せていた無邪気な笑顔はすっかり消え失せて、真斗は自分の長兄と同じような、上っ面だけの冷たい表情を見せるようになっていた。
 レンはそれが不快でならなかった。真斗だけは、兄のようにはならないと確信していたのだ。真斗だけは変わらず自分と親しくしてくれると、あの時は疑いもしなかった。自分たちの立場を自覚した後も、淡い期待を抱き続けてきた。だが、現実は甘くはなかった――レンは自分自身に対しても、次第に苛立ちを感じるようになっていた。
 女の子たちの注目を集め出したのも、同じ頃のことだった。同い年くらいの女の子たちに声を掛けて、パーティ会場を大人顔負けの出で立ちで闊歩した。母親譲りの美貌は、この時大いに役立ってくれた。レンの噂も彼女たちの耳に入っていたらしく、レンが甘い言葉を掛けると、彼女たちは夢見るような瞳でレンを見つめ、素直に頷いてくれるのだった。
 家の中の誰からも注目されず、また相手にもされなかったレンにとって、最高に心地の良い時間だった。誰かに求められて、誰かに注目されている――この感覚は、レンが今まで隠し持っていた寂しさを埋め合わせ、束の間の優越感を抱かせてくれた。レンは今までぽっかりと空いていた心の隙間をこうして埋めることで、精神を健全な状態に保っていた。
 それでも、真斗の姿を見かける度、心がざわめくことには気付いていた。パーティ会場で、ついつい彼の姿を探してしまう自分にも。女の子達を侍らせ時間を潰すことで真斗のことを考えないようにしていたが、少し気を緩めた途端、視線は真斗を探して彷徨い、心は全て、彼のことで占められた。
 この心の状態が健全ではないことを、レンは知っていた。女の子達を侍らせていたと言っても、レンの中には彼女たち個人に対する恋愛感情が存在しない。彼女たちの熱烈な視線も、普段はレンの心を満たしてくれたが、時には鬱陶しいと思うことすらあった。
 それよりも何よりも、真斗の視線が欲しかった。幼い頃レンの孤独を埋めてくれたのは、真斗の無邪気な視線と笑顔だった。あれでなければ、この心は満たされない。レンはそれに気付いてしまった時、死ぬほど悶え苦しむ羽目になった。もう二度と向かないものを求めることに対する苦しみは、レンの精神を苛んだ。同時に、かつて彼の家庭事情を聞いた時に抱いた感情が蘇った。その感情が“嫉妬”という名前なのだと、レンは既に気付いていた。
 真斗は自分にないものを全て持っている。跡取りという人生における使命感も、父親に目を向けられてきた事実も、そのあまりに純粋で真っ直ぐな誠実さも、全て。それがたまらなく羨ましく、妬ましくてならなかった。それなのに、何故強烈に惹かれてしまうのか、まるで訳が分からなかった。レンは悶え苦しんだ。嫉妬という醜い感情に耐えかね、真斗のことなど突き放して、一生自分の目に入らない場所に置いておきたいと思う一方で、真斗のあの視線が欲しい、彼の心を自分のものにしたいと、強烈に願った。
 矛盾した自分の心に、けじめを付けなければならない。レンはその日、そう決意した。だからいつもは話し掛けることなどなかった真斗の方へ、徐々に歩を進めていった。
 真斗はレンに気付いて、俯きがちだった顔を上げた。その表情は驚いてはいたが、とても感情に乏しい、とレンは感じた。昔の面影は、もうほとんど残っていない。真斗はあの時の大人達と同じように、仮面を被ることを覚えてしまった――そんな気がした。
「よう。聖川家の坊ちゃん」
 からかうように発せられたレンの言葉に、真斗は気分を害したようだった。
「……何の用、だろうか」
 眉間に微かに皺が寄る。昔はこんな表情、見せたことがなかったのに――レンは寂しく思うと同時に、苛立ちに似た感情が込み上げてくるのを感じた。
「跡取り修行は順調かい? 大変なこったな」
「何が言いたい」
「まあ、そう身構えるなよ。少し話でもしないか? 昔よく遊んだ仲じゃないか」
 真斗は持っていたグラスを微かに傾け、いや、とレンから視線を逸らした。
「悪いが、そういう気分ではないので」
 レンはぐい、と、もう片方の手を強引に取った。真斗が驚いて鋭い声を上げた。
「何をする!」
 周囲にいた者達が何事かとこちらに視線を向けたが、レンは気にしなかった。
「いいから、来いよ」
「……は、なせ」
 真斗の語調が少し弱まったのに、レンは気付いた。
 傍のテーブルにかたりと音を立てて、グラスが置かれた。先刻までのグラスの主は、金髪の少年の手に引かれ、パーティ会場の外へと連れ出されていた。


 誰もいない静かな中庭で、二人は佇んでいた。微かに流れてくる風が心地よい。
「いい夜だ。月も見えるしな」
 レンは空を仰いだ。背後から、真斗の低い声が響く。
「どういうつもりだ。俺をこんなところに連れてきて」
「へえ……お前、いつから“俺”なんて言葉使うようになったんだ」
 お坊ちゃまにしては少々行儀が悪いんじゃないか。振り返って皮肉混じりにそう言うと、余計なお世話だ、と真斗がレンを睨んだ。
「久しぶりだな。随分と変わったじゃないか」
「それはお互い様だろう」
「そうかもな。もうあの頃には戻れない、ってか?」
「……俺はお前と、思い出話をするつもりはない」
 そうきっぱりと言い切る真斗の肩に、手を置く。真斗の視線がこちらを向く。それはかつてのものとは全く違う、針のような鋭さに満ちた視線だったが、レンの心は浮き立っていた。真斗の視線をこちらに向けられた。そのことが、純粋に嬉しかった。
「昔はもっと笑ってたのにな。いつからそんな冷たい大人になったんだい、真斗坊ちゃま?」
「馬鹿にするな。それを言うならお前も……いつもあんなにたくさんの女性を連れたりして、一体どういうつもりだ」
 それが嫉妬から出た発言でないことは、レンにも分かっていた。真斗は何より不誠実を嫌っていた。一人の女性をこれと決めて連れ添うのではなく、ああして大勢侍らせていることに、倫理的な嫌悪感を覚えていたのだろう。それでも、それを嫉妬から出た発言だと思い込むことで、レンは無意識に自分の心の隙間を満たしていた。
「おやおや、モテない男の嫉妬はこれだから……醜いね」
「醜いのはどっちだ。公衆の面前で平気であのような姿を晒せるなど――」
 レンは急に虚しさを覚えた。久しぶりに会って言葉を交わしたと思えば、この有様だ。挑発的な言葉を最初に投げたのは自分とはいえ、小さな引っ掻き傷を無数に増やすような行為を互いに繰り返している。何の益もない。百害あって一利なしとは、まさにこのことだ。
「まあ、言い争うのはこの辺にしよう。せっかく会ったんだ、昔話でもしようじゃないか」
「興味ない」
「そう言うなって。昔、中庭でよく追いかけっこして遊んだよな。覚えてるか?」
 真斗は何も答えなかった。レンは言葉を続けた。
「そういえばお前、垣根の裏に隠れた俺をいなくなったと思い込んで、泣きそうな顔、してたっけな」
「それは……」
 真斗の表情が微かに揺らいだ。レンは口角を上げたまま、更に言葉を続ける。
「パーティの後、お互いに父親から怒られて……遊ぶな、って言われて。でも、お前と関係を断つのは嫌だった。俺達は特別だ、って言い合ったよな、覚えてるか?」
 すると今度は真斗も、はっきりと分かるように頷いた。
「……ああ、覚えている」
 ほんの少しだけ、真斗の表情が和らいだ気がした。先程までの警戒が解けたのかもしれない。レンは内心ほっとする一方で、自分を戒めてもいた。
 このままではいけない。そう思ったからこそ、自分は真斗に声を掛けたのだ。揺らいではならない。レンは覚悟を決めて、表情を引き締め、言い放った。
「……でも、今は違う」
 真斗が明らかに目を見開くのが分かった。
「俺はお前が妬ましくて妬ましくて仕方がない」
 真斗が、鋭く息を呑む気配が伝わってきた。レンの心がちくりと痛んだが、レンはわざとその痛みから視線を逸らした。
「お前は俺にないものを何でも持ってる。跡取りっていう地位も、父親から目をかけられてきたって事実も、全て」
「それは」
「俺はお前を見てると、どうしようもなく苛つくんだよ」
 吐き出すように言った。吐き出したはずなのに、全身が毒に冒されたようになっていくのを、レンは静かに感じていた。細胞が死んで、干からびていく。過去の神宮寺レンという人間が死んで、新しいものに生まれ変わろうとしている。――否、それはただの思い込みで、生まれ変われと、レンがひたすら願っているだけだったのかもしれない。
「だから、もう俺の前に姿を見せるな。二度とだ」
 真斗の表情が徐々に変わり始めるのが見えた。真斗は再び顔を強張らせ、レンを睨み付けた。
「それは、こちらの台詞だ。俺もお前の姿など……見たくもない。不真面目なお前の姿など」
「はっ。最後までいい子ちゃんぶるってか。さぞかし良い教育を受けてきたんだな、真斗坊ちゃま?」
「黙れ、レ――いや、神宮寺」
 真斗が言い直した自分の名字が、ひどく冷たい響きに聞こえた。
 これで、自分と真斗の道はきっぱりと別れてしまったのだ――レンはそう自覚した。もう二度と交わることはないだろう。これでやっと、思い煩いからも解放される。溜息を吐いた。だが、とレンは顔を歪める。今の自分は解放感に満ち溢れているはずなのに、心には何故か、苦々しい思いしか残っていなかった。
「じゃあな。せいぜい元気でやれよ、聖川」
「お前に言われる筋合いはない」
 冷えた言葉を交わし合い、レンは真斗の横を通り過ぎた。寄り添えるかと思えた二つの道は、今、はっきりと別れてしまった。これからは、ずっと平行線を辿っていくのだろう。
 じくじくと苛む痛みを抱えながら、レンは、心の中に置いていた真斗への思いを投げ捨てた。二度と自分の意識の中に入らないように、奥深くに封印した。これでもう、真斗への思いは二度と戻ってこないはずだった。


 ずっと、そう思い込んできた。真斗の姿を、早乙女学園の入寮日に見かけるまでは。
「嘘、だろ……」
 レンの身体から力が抜けていくのを感じた。まさか。そんなはずはない。あの男は自分と違って、財閥の跡取りとしての教育を受けているはず。こんなところで余計な勉強をしている暇など、あるはずがないのに――
 封印していたはずの思いが、紐解かれていく。レンは蘇る苦々しい思いを処理できずに、悶々とする羽目になった。
「なんであいつが……」
 拳を握る力が強くなる。噛んだ唇から、うっすらと血が滲んだ。
 レンは嫌というほど思い知らされる羽目になった。自分が全く、真斗への思いを捨て切れていなかったことを。
 とにかく心を落ち着けて、掲示板に張り出された同室者の名前を探す。神宮寺レン。自分の名前の横に書かれていた、その名は――
「おい。待てよ……」
 レンの目と口が同時に開いていく。思わず、持っていた入学案内書を取り落としていた。信じられない名が、そこには書かれていた。もう二度と見ることもない、見たくもないと思っていた、思い込んでいたその名前。
 ――聖川、真斗……
 レンの思い煩いの日々が、再び始まることとなった。


アニメ4話を見返していて、レン様の心情の移り変わりをじっくり書いてみたくなりました(2011.8.1)